Appendix 2 電流磁場ソース一覧#

EMSolution は様々な電流磁場ソースを定義することができます。 以下に,電流磁場ソースの一覧と違いについて示します。詳細は各モジュールの説明を参照してください。

1. 電流磁場源の種類と説明#

電流磁場源の種類と説明#

電流磁場源

説明

要素電流源 ELMCUR

トータルポテンシャル内に作成した導体の体積要素を指定し,一様電流を印加する。導体要素には六面体,三角柱が使用可能。六面体の電流入出面は任意の対向面,三角柱の電流入出面は1と2のみ可能。

表面定義電流源 SDEFCOIL

トータルポテンシャル内に作成した導体の体積要素を囲む方形電流路を面要素で定義し,一様電流を印加する。4つの面要素プロパティで方形電流路を定義する。導体要素には任意の種類を使用できる。

ポテンシャル電流源 PHICOIL/DCCURR

トータルポテンシャル内に作成した導体のBn=0の対称境界面の一方に面要素を定義して流入面 [1] とし,もう一方のBn=0対称面を流出面とし(流出面の面要素定義は不要),入出力面間の導体内の電気スカラポテンシャルの勾配から定常電流密度分布を定義する。ループ導体の一部にギャップ要素を定義して流入面を指定することも可能。

面電流源 SUFCUR

トータルポテンシャル内に作成した導体の対称境界面の一方に面要素を定義して流入面 [1] とし,もう一方のBn=0対称面を流出面とし(流出面の面要素定義は不要),入出力間の回路電圧および周辺磁場からコイル領域を渦電流場として解いて内部電流分布を求める。ループ導体の一部にギャップ要素を定義して流入面を定義することも可能。静磁場解析には使用不可。定義面の通過電流をゼロに固定する際にも使用。

外部電流源 COIL

変形ポテンシャル内に有限要素とは別に電流磁場源を定義する。COILの一部あるいは全部が変形ポテンシャルの外側にあっても構わない。有限要素とは別に運動させることができる。

[1] 電源の正側の電圧が加わる面を流入面とする

面要素の定義

面要素の定義#

2.電流磁場源の選択指針#

電流磁場源の選択指針#

電流磁場源

適用可能なコイルの種類

種  類

適用モード

巻線コイル (一様電流)

バルク導体 (分布電流)

要素電流源 ELMCUR

×

内部磁場ソース 一様電流印加用

Static,AC,Transient,Steady-Current

表面定義電流源 SDEFCOIL

×

内部磁場ソース 一様電流印加用

Static,AC,Transient,Steady-Current

ポテンシャル電流源 PHICOIL/DCCURR [5]

○/△ [2]

○/△ [3]

内部磁場ソース 準一様電流印加用

Static,AC,Transient,Steady-Current

面電流源 SUFCUR

×/○ [4]

内部磁場ソース 導体内分布電流

AC,Transient,Steady-Current

外部電流源 COIL

×

外部磁場ソース 一様電流印加用

Static,AC,Transient,Steady-Current

[2] 屈曲部では分布電流になる

[3] 一定の直流電流のみに使用可能,表皮効果あるいは渦電流を考慮した分布電流を計算する場合はSUFCURを使用する

[4] 巻き線形状モデル化したときは適用不可,素線形状でモデル化したときは適用可能

[5] 導体の導電率が異なる部材が接触した導体に対しては,DCCURRを使用する

電流磁場源の選択指針2#

電流磁場源

二次元/三次元

使用可能な 要素の種類

コイル断面の 電流分布

適用コイル断面形状"

要素電流源 ELMCUR

二次元の方が適用しやすい"

六面体 三角柱のみ [6]

一様

任意断面

表面定義電流源 SDEFCOIL

三次元

体積要素 (定義は面要素)

一様

方形断面 台形断面でも可*ヒント

ポテンシャル電流源 PHICOIL/DCCURR

二次元&三次元 二次元並進対称の場合は一様 二次元軸対称の場合は軸側に偏る

体積要素 (定義は面要素)

直線部は一様 曲線部は内側に偏る

任意断面

面電流源 SUFCUR

二次元&三次元

体積要素 (定義は面要素)

渦電流を含めた分布

任意断面

外部電流源 COIL

二次元&三次元

有限要素を 使用しない MeshedCOILの場合,有限要素とは別に六面体要素で定義

一様

矩形断面 MeshedCOILの場合, 台形断面も使用可能

[6] 三角柱はコイル断面側が三角形の場合に使用可能,さらに要素断面積一定の原則を保持することも必要

電流磁場源の選択指針3#

電流磁場源

定義方法

電流方向指定方法

ヒント

要素電流源 ELMCUR

各要素の断面積を揃えた六面体で作成した任意断面形状に対し適用。

六面体,三角柱の要素定義方向で電流方向を指定

流路に沿って一定の断面積を保持する必要がある。またOPTION=0のときは各要素の断面積が一定である必要がある。

表面定義電流源 SDEFCOIL

体積要素で作成した方形コイル表面を面要素で囲う。面要素の法線方向は内向き

4つの面要素IDで右ねじ順で電流方向を指定。

巻き線コイルにはこの磁場源を使用する。台形断面は適用可能だが一様電流ではなくなる。

ポテンシャル電流源 PHICOIL/DCCURR

体積要素で作成したコイル断面(対称境界面)の片方に面要素を貼る。 ループコイルにはギャップ要素で定義面を指定する。

定義面要素の法線方向が正方向

矩形断面以外にも適用可能だが,屈曲部で電流が分布するため,要求精度によって均質化対策必要。PHICOILでは物性番号が異なる材料を接触導通させることはできない。DCCURRで対応

面電流源 SUFCUR

Static不可。PHICOILで代用可能。 ソリッド要素で作成したコイル断面(対称境界面)の片方に電流入出力用面要素を貼る。 ループ導体にはギャップ要素で定義面を指定する。

定義面要素の法線方向が正方向 表皮効果を考慮した導体メッシュを作成

渦電流を含む解析のみに適用可能。定義面の通過電流をゼロに固定する解析にも使用可能。

外部電流源 COIL

変形ポテンシャル領域もしくは有限要素の外部に定義する。形状を座標値で入力。もしくは六面体要素(MeshedCOIL)で作成。 電圧入力の場合,CALC_INDで空心のインダクタンスを計算する必要がある。

形状入力の場合,指定方向が正方向。 MeshedCOILの場合,六面体要素定義方向が正方向。

トータルポテンシャルと変形ポテンシャルの境界面で磁場分布をビオサバール則で計算するため磁性体とCOILが近すぎると計算精度に影響がでる。

補足説明#

補足説明#

項  目

説    明

電流とターン数の設定方法

コイルの規格化電流=ターン数とすると外部電流×ターン数=コイル断面電流となる。 電流,電圧についてはCIRCUIT/NETWORKの中で時間関数を指定する。

インダクタンス算出方法

CIRCUITやNETWORKで電源に接続した場合,outputファイルに出力される磁束(Flux)を電流(Current)で割算して算出可能。COILの空心のインダクタンスは,CALC_IND=1でoutputファイルのステップ計算前に出力される。

電流の連続条件

電流は境界条件を含めて連続でなければならない(divJ=0)。そのため,メッシュとして定義するELMCUR,SDEFCOIL,PHICOIL,SUFCURの流入出面には対称境界条件を指定する必要がある。 COILも閉じている必要があるが,メッシュの対称条件が適用されないためフルモデルで定義する必要がある(例外有り [7]。バスバーのように遠方に入出していく場合,メッシュから十分遠方まで伸長すれば閉じていなくてもかまわない(REGULARIZATION=1が必須)。

コイル抵抗

SUFCURはバルク導体領域も渦電流場として解くため必ず導電率SIGMAを与える。導体抵抗は直接計算されず,渦電流損失heatから抵抗を評価する。ELMCUR,SDEFCOIL,PHICOILにおいてはコイル領域にSIGMAを指定しても,渦電流は考慮しない。SIGMAを指定することでターン数を考慮したコイル抵抗をoutputファイルに出力する。コイル部のジュール損失はコイル抵抗とコイル電流からI2Rとして求める。また,ELMCUR,SDEFCOIL,PHICOILにおいてはSIGMAを0として,外部抵抗でコイル抵抗を指定しても良い。COILについてコイル抵抗を考慮する場合は外部抵抗を使用する。

[7] 周期境界面にΩrが接しない場合はメッシュ領域だけのCOILで対応可能